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「今すぐ困っていないし、実家はとりあえずそのままでいいか」。相続した空き家を前に、そう感じる方は少なくありません。けれども空き家の放置は、時間がたつほど費用とリスクが静かに積み上がっていきます。
この記事では、空き家を放置したときに起こる3つの大きなリスクを、国の資料をもとに整理します。読み終えるころには「なぜ早めに動いたほうがよいのか」が具体的にイメージできるはずです。
空き家を放置する3大リスクの全体像

放置のリスクは、大きく次の3つに分けられます。どれか1つではなく、放置が長引くほど3つが連鎖していくのが怖いところです。
- 管理コストがかかり続け、倒壊や近隣トラブルの原因になる
- 空家対策特別措置法にもとづき、行政から指導・勧告・命令を受ける(命令違反は過料の対象)
- 勧告を受けると固定資産税の軽減特例が外れ、土地の税負担が大きく上がる
まずはこの流れを1枚の図で見てみましょう。
リスク1:管理コストと倒壊・近隣トラブル

人が住まなくなった家は、想像以上の速さで傷みます。換気や通水が止まると湿気がこもり、木材の腐朽やシロアリ、雨漏りが進みやすくなります。庭の草木は伸び放題になり、放っておくと隣地にはみ出してしまうこともあります。
こうした劣化を抑えるには、定期的な見回り・換気・庭木の手入れが欠かせません。遠方に住んでいれば交通費もかかりますし、業者に管理を委託すれば月々の費用が発生します。誰も住んでいない家にも、固定資産税をはじめ維持費は出ていき続けます。
さらに深刻なのが、建物の老朽化による倒壊や、外壁・屋根材の落下です。万一それが原因で通行人や隣家に被害が出れば、所有者として損害賠償を求められるおそれもあります。空き家は「持っているだけ」でも、近隣との関係を悪化させる火種になりかねないのです。
リスク2:空家対策特別措置法による指導・勧告・命令

放置された空き家には、法律にもとづく行政の関与が及びます。その根拠が「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)」です。2023年(令和5年)12月13日に改正法が施行され、行政が早い段階から動けるようになりました(出典:国土交通省「改正法について」)。
「特定空家」と「管理不全空家」の違い

法律には2つの区分があります。「特定空家等」は、そのまま放置すれば倒壊などで著しく危険・有害になるおそれがある状態など、すでにかなり悪化した空き家を指します。
もう一つの「管理不全空家等」は、2023年の改正で新しく設けられた区分です。まだ特定空家ほどではないものの、放置すれば特定空家になりかねない段階の空き家を指し、行政が早めに指導・勧告できるようになりました(出典:国土交通省「空家法について」)。つまり、放置が進む前の段階でも行政が動ける仕組みに変わった、ということです。
指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行の流れ

行政の措置は、いきなり厳しい段階に進むわけではありません。特定空家への措置は、改正法第22条にもとづき、次の順番で進みます(出典:国土交通省「住宅用地特例に係る措置」資料)。
- 助言・指導…まずは改善を促す段階
- 勧告…改善が見られないときの次の段階。ここで固定資産税の軽減特例が外れます(後述)
- 命令…勧告にも従わない場合。従わなければ過料の対象に
- 行政代執行…最終段階。行政が解体などを代わりに行い、費用は所有者に請求されます
管理不全空家も、助言・指導と勧告の対象です。勧告を受けると軽減特例が外れる点は特定空家と同じで、その後さらに悪化して特定空家に認定されれば、命令・代執行へと進み得ます。
命令違反は「50万円以下の過料」

命令に違反すると、50万円以下の過料の対象になります。また、立入調査を拒否・妨害した場合は20万円以下の過料です(出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)。
ここで一つ補足です。これは「過料」であって「罰金」ではありません。過料は行政上の秩序を保つための負担で、前科がつく刑事罰の罰金とは別物です。とはいえ、まとまった金額の負担であることに変わりはありません。
リスク3:固定資産税が上がる仕組み

放置の金銭的リスクとして見落とされがちなのが、固定資産税の増額です。鍵を握るのは「住宅用地特例」という軽減措置です。
住宅用地特例とは

住宅が建っている土地には、税負担を軽くする特例があります。国土交通省の資料では、次のように整理されています(出典:国土交通省資料、東京都主税局)。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 1/6に減額 | 1/3に減額 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 1/3に減額 | 2/3に減額 |
住宅が建っているだけで、土地の固定資産税が大きく軽くなっている、というわけです。逆に言えば、この軽減が外れると税負担はぐっと重くなります。
特例が外れるトリガーは「勧告」

大事なのは、特例が外れるタイミングです。特定空家・管理不全空家のいずれも、市区町村長から「勧告」を受けると、その土地は住宅用地特例の対象から外れます(出典:国土交通省資料)。
つまり「空き家に指定された瞬間に増税」ではありません。あくまで勧告が引き金です。判定は賦課期日(毎年1月1日)が基準になるため、実際の増税は勧告を受けた翌年度の固定資産税から反映されるのが基本です。
「最大6倍」は本当か

よく「固定資産税が6倍になる」と言われます。これは小規模住宅用地の課税標準が「1/6」に軽減されているため、それが外れると単純計算で6倍、という理論値が出どころです。
ただし「税額がそのまま6倍になる」と考えるのは正確ではありません。理由は3つあります。まず200㎡を超える部分はもともと1/3軽減なので理論上は3倍です。次に、特例が外れた土地には課税標準の上限を抑える「負担調整措置」が働きます。そして家屋分の税額は別計算で、敷地全体が一律6倍になるわけではありません。
これらの理由から、実際の増加幅は「最大で約6倍になり得るが、負担調整などにより3〜4倍程度に収まるケースが多い」と説明されています(出典:東急リバブル L-note)。一方で、都市計画税の特例(1/3)も同時に外れるため、都市計画税のかかる地域では負担がさらに上乗せされます。具体的な倍率や金額は土地の評価額や自治体の課税状況で変わるため、お住まいの市区町村の固定資産税担当に確認するのが確実です。
あわせて知っておきたい:相続登記の義務化

放置リスクとあわせて押さえておきたいのが、相続登記の義務化です。2024年(令和6年)4月1日から、相続で不動産を取得した人には登記が義務づけられました(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記の申請をする必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。施行日前に起きた過去の相続も対象で、その場合は2027年(令和9年)3月31日が一つの期限とされています。
ただし「3年経過で自動的に過料」ではありません。実務上は、登記官が未登記を把握したうえで催告し、正当な理由なく応じない場合に裁判所へ通知される流れです。とはいえ、登記が済んでいない空き家は売却も処分も進められません。放置を抜け出す第一歩として、まず登記の状況を確認しておきたいところです。
では、何ができる?

📖 運営者の実体験:放置せず2年かけて実家を手放した全記録【体験談】
🏠 放置を続けるリスクを回避する3つの選択肢
- 空き家の処分方法5つを比較する(売る・貸す・解体など)
- 仲介と買取どっちが自分に向いているか確認する
- 信頼できる買取業者の見分け方を知る
ここまで見てきたとおり、空き家の放置は「管理コスト・行政措置・増税」という3つのリスクを少しずつ大きくしていきます。逆に言えば、早めに方針を決めて動くほど、こうしたリスクは避けやすくなります。
選べる道は、売る・貸す・解体する・相続放棄するなど、いくつもあります。それぞれの向き不向きや費用の目安は、次の記事で具体的に比較しています。
「そもそも何から手をつければいいのか」を整理したい方は、相続から処分までの全体像をまとめたこちらもあわせてご覧ください。
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- 固定資産税が6倍になる仕組みを詳しく読む →
- 相続登記の義務化について詳しく読む →
